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韓国的お友達の極意 その1

「言うべきことはきちんと言う」

別れ際に、「まだあなたは韓国にいるんでしょう? またかならず会いましょう」と言ったオンニ。その言葉には嘘はありませんでした。オンニが電話をくれたのか、わたしが電話をかけたのか、少し前のことなので忘れてしまったのですが、ともかく電話をきっかけにして、また会うことになりました。

オンニとの待ち合わせ場所は、たいていアックジョンドンの現代百貨店か、ギャレリア百貨店。現代百貨店は、地下鉄の駅と直結しているので、外国人のわたしにとっても行きやすい場所ですが、ギャレリアは微妙に地下鉄から離れていて、バスかタクシーに乗って行く必要があります。

初めて一人でバスに乗ってギャレリアに向かった時は、すっかり「初めてのおつかい」状態になってしまい、運転手さんに「イ ボスヌン ギャレリアヘ カヨ?(このバスはギャレリアに行きますか?)」と聞いてしまいました。で、なんとかバスに乗ったわけですが、しばらくして車内放送で「ギャレリア…」と言っているので、「ギャレリア前に着くんだな」と思ってあわててバスを降りてみると、あれ? ギャレリアはどこ? なんと、ずーっと左前方のほうに、ギャレリアが見えるではありませんか。あわて者のわたしは、1つ前で降りてしまっていたのでした。よくよく冷静に思い返してみると、あの車内放送は「次の停留所はギャレリア前」と言っていたのです。しまった、落ち着いて聞いていれば分かるはずなのに…まだまだ韓国語の修練が必要のようです。その後、アックジョンドンの駅からギャレリアまでは、15分見ておけば十分歩けることが分かり、天気が良ければ歩くようにしています。でも、多くの韓国人はこの程度の距離でも歩きたがりませんね。どうしてでしょう?車社会に慣れきっているからでしょうか。

アックジョンドンというのは、日本でいえばちょうど東京の青山エリアのようなところで、流行の最先端がすべて集まっているところです。韓国で初めてスターバックスが出来たのもこのエリア、といえばなんとなくイメージがつかめるでしょうか。オンニによれば、韓国の芸能人もよく歩いているのを見かけるとのことですし(狙い目は土曜の夜とのことですよ、みなさん!)、街全体が華やかな感じがします。

オンニと初めて2人で会った時、わたしは5分程度遅刻してしまいました。慣れない場所での待ち合わせ、ということもあって、初めは笑顔で許してくれたオンニも、その後もこりずに遅刻をするわたしにしびれを切らしたのでしょう。何回目だったか、オンニに「ダメだよ、遅れちゃ」とびしっと言い渡されてしまいました。それ以来、わたしは必ず5分前には到着するようにしています。

このことからも伺えるように、「いくら友達でも、言うべきことはきちんと言う」という姿勢が、日本よりも徹底しています。オンニとの付き合いの中でも、そういうことに何回か遭遇していますが、励まされたこともずいぶんある一方、やはり若干傷ついた経験もありました。でも、何を考えているか分からないよりは、意見や思っていることをはっきり言ってもらうほうが、お互いにとってシンプルな関係が築けるのではないかと思います。

もともと、わたしは思っていることを隠すのが苦手のほう。変に気を回す必要がないのはありがたいことで、この韓国式表現は逆に楽な部分もありました。ただし、これを誰にでもやっていいのか、ということは決してなくて、あくまでも「チング」(友達)や親しい間柄で、というふうに考えておいたほうが無難でしょう。

さて、「言うべきことはきちんと言う」精神が、とんでもない形で発揮される場面があります。それはケンカです。ある晩、地下鉄の駅で電車を待っていると、ホームの前のほうで、おばちゃんとおっさんの怒鳴り声が聞こえます。初めは「何だよ」ぐらいのものだったのが、だんだんエキサイトしてきたらしく、双方わめきまくる声が駅全体に響き渡ります。おばちゃんのほうは家族が一緒にいたのですが、黙って聞いていた家族が突如加勢し、もつれ合いの様相を呈してきました。

さすがに、周りの客からも「もうやめろよ」という声が出始め、駅員も駆けつけて来ましたが、それでもそれぞれ言い分を曲げません。制止も聞かず、主張をまくし立てています。やじ馬の中には、うんうんうなずきながら聞いている人もいて笑えます。ようやく、おばちゃんの家族が「行こう、行こう」ってな感じで、おばちゃんをうながしたところ、おばちゃんは「なんでやねん、あたしが何で引かなあかんねん。あんたらももうちょっとしっかり闘え」と言ったかどうかは定かではありませんが、家族をどつきながら何やら文句を言った挙句、空に蹴りを入れていました。韓国人のあり余るおばちゃんエネルギーを感じた、エキサイティングな夜でした。次回は「韓国的お友達づきあいの極意 その2」と参りましょう。


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